※この記事は本人の許可を得て投稿しています。
京都工場に在籍しているベトナムの方のうち何人かは、過去に別の場所で一緒に働いた経験があったりするようです。HAOさんと話している時、そういえば、とニャットさんの帽子について話をしてくれました。
ニャットさんの帽子。それがどんなものを指すのか、京都工場の従業員ならすぐに頭に浮かびます。ニャットさんといえばあの帽子。ファッションに疎いため、名称をインターネットで調べてみたところ、バケット・ハットというものでした。ニャットさんはこの帽子をずっとずうっと被っていて、頭の上にそれがないと違和感を覚えるくらいです。ニャットさんをイラストで描いて、とリクエストされたら私ならまず帽子から描くでしょう。
そのニャットさんの帽子、HAOさんが以前広島で一緒に働いていた当時も被っていたらしく、なんと7年洗っていないという情報を得ました。毎日被っている帽子なのでシンプルに計算すると2557回被った間に一度も洗っていないということです。日頃、清潔を意識した生活をしているわけではありませんが、さすがにびっくり。
早速勉強し始めたばかりのベトナム語で「帽子を洗いなさい」(命令口調なのはそれしかわからないためです)とホワイトボードに書いて突きつけました。週末に洗うという返事でしたが、いまひとつ手ごたえがありません。台拭きを洗うついでにこちらで洗ってしまうことにしました。洗うからよこしなさいと伝えると、少し恥ずかしそうにこっそり渡してくれました。
水を使った掃除が好きなので、ワクワクしながら洗剤を入れて揉み洗いをしていると、どんどん黒い水が出てきます。手で押せば押すほど、水の色が濃く濁っていきました。予想はしていましたが、実際に見てみると衝撃の度合いはなかなかのものです。しばらくぴちゃぴちゃとバケツの中の帽子と格闘し、何度か水を変え、水の色が透明になったところでタオル脱水をして干しました。
昼過ぎは汗ばむくらいの気温です。風もゆるゆると吹いて、絶好の洗濯日和でした。日光浴をする観葉植物の隣で揺れる帽子が、すっきりと気持ちよさそうに見えます。もしかしたら、本当は洗われたくなかったかもしれませんが、そんなことは知りません。乾いたらご主人様のところへ返してあげるからね、と撫でていると、帽子はやっぱり嬉しそうにも見えてきました。
何でもない日でしたが、カレンダーに「ニャットさんの帽子」と書き込んで、記念日とします。来年も春が来たら一番に洗ってやるぞ、とひそかに決意するのでした。